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44 ハイエン (台風30号)
 

44  ハイエン  (台風30号)


だったら黒く塗りつぶしちゃえばいいのよ、と彼女は言った。

僕は描いていた風景画の壁の割れたところから黒褐色のうみ

つばめを飛ばし、飛んだところに広がる海をどうすることも

できなかった。彼女は立ち上がり、キッチンでお湯を沸かす。

プーアルの夜みたいなコーヒーの豆。視界と影。空は気持ち

よく晴れていた。片手にカップを持ったまま、彼女は絵を
き込む。黒い瞳に映る風景が黒くひかる。行ったことない

に懐かしい気がすることってあるよね。自分で言ってうな

いて、彼女は少しカーテンを開けた。そのことで僕がわかっ

たことは、彼女は見えない風景に懐かしさを映したってこと。

 

コーヒーの匂いが宙を漂い、僕らは真っ黒な海に放り出され

た。いろんなものがごつごつとあたった。そこらじゅうに僕

と僕たち斜めに飛んだだろう空も砕けたのか豹だった見てい

た覗いていた何もかもあった取り込んでしまった飲んだ端が
つめたいいたい爪。海峡から
底へ。人にはない感覚が最後だ
った。彼女を。

彼女に。近づく死を。

残せ。

 

僕は風景にうみつばめを飛ばし続け、絵は大半が黒く澱んだ。

残す。それは彼女にとって、僕にとって、懐かしい風景とな

 

 

北極海を除くすべての海に生息する。

体調約二十センチ

海面を飛び、小魚やプランクトンを食べる。

嘴の上に白い菅のような鼻。

地上に卵を一個産む

四〇日から五〇日で孵化する。




*ハイエンは中国でうみつばめの意

| 台風行 | 12:22 | comments(0) | - | pookmark |
43 クローサ
 43  クローサ (台風29号)


父が鶴を描く

冬の平原に降り立った一本の足が細く伸びて

冷たい雪を折りたたむ

ぬくもりの白

その白さに支えられて

足先はやわらかく尖って地を刺す

期待で持ちこたえらるよう

光を反射する

こちらに降り立って

寒さに肺をひらく

傷のひとつひとつがまだ生きている

クローゼットに並んだ洋服のように

閉ざされて舞っていた

うつくしい染み

もっとずっと厚みがある身体

薄く見えるのは黒がどこまでも黒だから

飛んでいるあいだはここにいない

地表に映る影を踏むと少年は大人になっていく

古い家の裏にひろがる平原を駆け抜けて

骨は夜伸びる

この土地に残るかどうかは聞かなかったけれど

毎日鳥の足を見ている

黒に塗るために黒い瞳を持って

生まれた日は雪が降っていた

降り積もる雪のなかにはたくさんの埃や塵や

誰かが吐き捨てた犬もいて

どうにもならないときにはそこにいて

黙っていても聞こえる

足になる



*クローサは鶴 (カンボジア)

| 台風行 | 16:06 | comments(0) | - | pookmark |
39 ナーリー (台風25号)
 39 ナーリー (台風25号)



呼び止められた名前の

まだ香りにならない空気の裾を

弾むように惜しんでは消えてゆく

午後

眠りの淵からほんの片足を地面に投げて

女の子の吐く息は空を濡らす

赤い目のいきものが生まれる瞬間

寝返りを打つ背中から吹き出す

心臓は熱を持つ

だらりとひろげられた手のひらを這っていく

細い筋が終わらない

傾いた時にひかりながら

水の方へ姿をひるがえしていくのを

音のない世界で見ている

白さ、に近い感情

頭の骨もきっと咲いてる

立っていられないほどの匂いに溺れて

名前を取りこぼす

夕暮れに差す傘は建物を滲ませ

長靴の夜の底に忍び込む

フレアスカートに風景は仔細に写し取られて

何度でも走ってみせる

みて、はしってるよ

こんなにおおきくなったよ

ひらり、閃光





*台風行

ナーリーは百合(韓国)。

| 台風行 | 11:43 | comments(0) | - | pookmark |
41 フランシスコ (台風27号)
 41  フランシスコ (台風27号)



人差し指でくるくると風をいじる癖

眠くなるとその癖はひどくなり

目を閉じても指だけは起きている

もうはじまっちゃったんだ

朝、落ちてくる青に

影をよけて街の

踏み台をひとつ上がる

夜が明け切らないうちに

次の物語りは

折れた風切り羽を

追って

しばらくは田園の秋の風景の中に

明るい模様をした光のとなりで

向かい合って笑っていた

くるくると巻いた髪の毛が

舞い上がったり横向きになったりすると

手をつなぎたくなる

行こうって言われると離れなくなる手で

二人分の風を巻き上げて

もうすっかりはじまっちゃったんだ

眠っている時も

片手を上げて

くるくる

くるくる

青に染まっていく

指と

足と






*******



梁川梨里さんと、ツイッターではじまった台風行の試み。
号数が行数
タイトルは台風の名前一覧からつけています。

台風一覧(梨里さんのブログ Everlasting Moonより)

41フランシスコは男性の名前(米国)です。

梨里さんの台風行、19号から25号まで読めます。

| 台風行 | 23:13 | comments(0) | - | pookmark |
40 ウィパー (台風26号)

40 ウィパー (台風26号)



自由奔放に見える彼女の素直な一面を

言葉から読み取ろうとしていつも失敗する

少女の化石を胸にいくつも転がしている

石と石とが完全にぶち当たった瞬間に散る

火花のような眼差しのとき

彼女のからだは薄青く静まり

海月

じっと潜んでいる

嵐の一群にいながら透明で

すべての海水を受け入れ解き放す

その過程は私から見ると曖昧で

ひと房のぶどうの

ひとつの実の

完全で不完全な球形をしている

どれかひとつが勝手に計画を進めても

どれかひとつが私の方を振り向いても

泣き出して

素肌までなくしてしまいそうになっても

ひと房の

海のいきもの

抱き上げると重さが腕から肩にまで浸透し

ころんと私の胸板に落ちる小石

怒りの終わりはうっすらと青い

波を何枚も重ねた

まっすぐな水のあとの

沈黙




*******

梁川梨里さんが書いている、進行形の台風行は、日本の号数に合わせているので、私も同じように規定してみました。
これまでは一覧のNOに合わせていたので、日本の台風とは違っていたのです。
機会があれば、NO数にも合わせたものも書いてみたいです。

| 台風行 | 09:52 | comments(2) | - | pookmark |
台風行 24 シマロン

ツイッターで梁川梨里さんとはじまった、台風行の話。
台風の名前と行数で書く詩です。

24号が北上している朝、ゆうべ書いた詩を読み返すと、かなりのんびりしていて、自分でもちょっとびっくりしています。
台風という言葉には、子供の頃から馴染みがあるせいでしょうか。
台風が来ると学校が休みになる、とかそんな、子供ごころのたわいもない感覚が、今も気持ちの隅にある。災害が起きるということまでは考えられなかった子供の私にとって、台風は自分に近い側にいる味方のようなものだったかもしれません。



24 シマロン

納屋のしくみは簡単で

寝る場所と食べる場所が全部でひとつ

屋根もひとつっきり

家の外にある

星空の下での出来事

影はなく

しめやかに午後を踏む時だけ

濃い色が残った

クズ ススキ セイタカアワダチソウ

夕暮れから通って

端っこに行く

渦を巻くのは流れるときのならわし

黒い背を見ながら

息を吹き返し

闇を辿っていく帰り道の真ん中で

繰り返されるいきもの

そのなかに

きみと出会った日もあった

足元にぽっかり空いた月の穴から

草が匂いたち

私たち

あれからずっと夕暮れを通って

一緒に寝て

一緒に食べた



☆シマロン (野生の牛)


梁川梨里さんのブログ

Everlasting Moon 

私の詩集の紹介も書いてくださっています。

好きな詩集 

ありがとうございます!!

| 台風行 | 08:32 | comments(2) | - | pookmark |

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